『借りぐらしのアリエッティ』の裏話には、制作秘話やキャラクター誕生の秘密、舞台モデル、原作との違いなど、知るほど作品の見え方が変わる情報が数多くあります。
2010年7月17日に公開されたスタジオジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』は、小人の少女アリエッティと人間の少年・翔の交流を描いた作品です。
監督を務めたのは、当時スタジオジブリ最年少の長編映画監督となった米林宏昌さん。
原作はイギリスの児童文学『床下の小人たち』ですが、映画では舞台を現代日本へ変更し、日本の古い屋敷や自然を背景に独自の世界観が作られました。
一見すると静かで優しい物語に見える本作ですが、制作の裏側を知ると、キャラクターの心理や映像表現に込められたこだわりが見えてきます。
今回は『借りぐらしのアリエッティ』の裏話として、制作秘話やキャラクターのモデル、知られざる設定について詳しく紹介します。
借りぐらしのアリエッティはどんな作品?制作された背景とは?
『借りぐらしのアリエッティ』は、メアリー・ノートンによる児童文学『床下の小人たち(The Borrowers)』を原作としたスタジオジブリ作品です。
物語の主人公は、人間の家の床下で暮らす小人の少女アリエッティ。
小人たちは人間から見れば「失われたもの」を少しだけ借りながら生活しており、人間に姿を見られてはいけないという掟を守っていました。
しかし、アリエッティが初めて父親ポッドと「借り」に出た夜、療養のため屋敷へやってきた少年・翔に姿を見られてしまいます。
そこから、本来交わるはずのなかった小人と人間の少年の交流が始まります。
本作の制作には、宮崎駿さんや鈴木敏夫プロデューサーも深く関わっています。
実は『借りぐらしのアリエッティ』の企画は、宮崎駿さんと高畑勲さんが若い頃にもアニメ化を検討していた作品でした。
当時は実現しませんでしたが、2006年頃に再び企画が動き始めます。
その際、鈴木敏夫プロデューサーは「若い人に任せたほうがいい」と考え、米林宏昌さんを監督に起用しました。
結果的に米林監督にとって初の長編監督作品となり、その後の『思い出のマーニー』や『メアリと魔女の花』へつながる大きな転機になったのです。
借りぐらしのアリエッティの裏話!タイトルや舞台変更の秘密とは?
映画制作初期のタイトルは、現在の『借りぐらしのアリエッティ』ではなく『小さなアリエッティ』でした。
そこに「借りぐらし」という言葉を加えたのが鈴木敏夫プロデューサーです。
小人たちはお金で物を買うのではなく、人間の世界から必要なものを少しずつ借りて生活しています。
この暮らし方には、物を大切に使う昔ながらの価値観が込められていました。
現代社会では、新しいものを買うことが当たり前になっています。
だからこそ「借りる」という生活スタイルをタイトルに入れることで、物との向き合い方を考えさせる作品になったのだと考えられます。
また、原作の舞台はイギリスでしたが、映画版では現代日本へ変更されています。
その理由には、日本人が暮らしている身近な場所をもう一度見つめ直してほしいという思いがありました。
古い屋敷の床下、壁の隙間、庭の草木。
普段なら見過ごしてしまう場所を、小人の視点で描くことで「自分たちの生活にも知らない世界が広がっている」という魅力を表現しています。
アリエッティや翔にはモデルが存在した?キャラクター誕生の裏話
『借りぐらしのアリエッティ』の大きな魅力は、アリエッティと翔という対照的な2人のキャラクターです。
実は、それぞれの人物には制作時のこだわりがありました。
アリエッティは、小さな体ながら勇敢で行動力のある少女として描かれています。
髪型についても、制作初期にはショートヘアや三つ編み、ポニーテールなど複数の案が検討されました。
最終的に現在の赤い髪留めを使ったポニーテールに近い姿へ決定。
この髪留めがアリエッティらしい活発さや少女らしさを象徴するデザインになっています。
一方、翔の声を担当したのは神木隆之介さんです。
翔は12歳の少年で、心臓の手術を控えながら「自分は長く生きられないかもしれない」と考えている人物でした。
制作側は、病弱で繊細な少年の雰囲気を表現するため、神木隆之介さんの存在感を重視したと言われています。
神木さん自身も幼少期に大きな病気を経験しており、その経験が翔というキャラクターの説得力につながった部分もあります。
ただ声優本人の人生とキャラクター設定を完全に同一視することはできません。
あくまで、役に必要な繊細な感情表現と神木さんの持つ雰囲気が重なったという点が重要です。
ハルが小人に執着する理由には裏設定があった?
映画の中で強烈な印象を残す人物が、屋敷のお手伝いをしているハルです。
ハルはアリエッティ一家の存在を知ると、小人を捕まえようと行動します。
ホミリーを瓶に閉じ込めたり、ネズミ駆除業者を呼んだりする姿は、観客から見るとかなり怖い存在でした。
しかし、ハルには「過去に小人を見たことがあり、誰にも信じてもらえなかった」という設定があるとされています。
そのため、今度こそ小人の存在を証明したいという強い執念につながったと考えられます。
もちろん映画本編だけでは詳しく描かれていませんが、この背景を知ると単純な悪役ではなく、過去の経験に縛られた人物として見ることもできます。
個人的には、ここが『借りぐらしのアリエッティ』の面白い部分だと感じます。
ジブリ作品では、敵役にも単純な善悪では割り切れない事情が描かれることが多く、ハルもその流れを受け継いだキャラクターなのではないでしょうか。
借りぐらしのアリエッティの舞台モデルは青森県の盛美園?
映画の美しい背景には、実際の場所を参考にしたモデルがあります。
特に有名なのが、青森県平川市にある国指定名勝の盛美園です。
盛美園は和洋折衷の美しい庭園で、映画に登場する屋敷や庭の雰囲気づくりに影響を与えたと言われています。
また、東京都小金井市の「はけの小路」周辺も、自然豊かな景観の参考になった場所として知られています。

米林宏昌監督は、本作を「美術の映画」にしたいという考えを持って制作しました。
そのため、色彩表現にも強いこだわりがあります。
例えば、夜の「借り」の場面では青を基調にした映像、小人たちの家では黄色を中心とした温かい色合いが使われています。
シーンごとに色の印象を統一する演出は、映画『ラストエンペラー』から影響を受けたとも言われています。
ストーリーだけではなく、1枚の絵として楽しめる作品に仕上げようとした監督の意図が感じられます。
アリエッティの裏話で語られる都市伝説は本当なのか?
『借りぐらしのアリエッティ』には、ネット上でさまざまな都市伝説も広がっています。
代表的なのが「アリエッティの正体はゴキブリをモデルにしている」という説です。
床下で暮らす、人間の食べ物を利用する、夜に活動するという特徴から連想されたものですが、公式設定として認められているわけではありません。
また「アリエッティ一家はその後悲惨な結末を迎える」「翔の手術は失敗する」といった説もあります。
しかし、映画本編ではそのような展開は描かれていません。
映画のラストでは、アリエッティ一家が新しい住処を求めて旅立ち、翔も前を向いて生きていく姿が描かれています。
その後を明確に描かなかったからこそ、観客それぞれが未来を想像できる余白が残されたのです。
借りぐらしのアリエッティの裏話から見える作品の本当の魅力
『借りぐらしのアリエッティ』は、大きな冒険や派手な戦いがある作品ではありません。
しかし、小さな存在が必死に生きる姿や、異なる世界にいる2人が短い時間で心を通わせる過程には、独特の感動があります。
筆者として特に印象的なのは、アリエッティと翔がお互いを救う関係になっている点です。
翔はアリエッティに「生きる理由」を見つけ、アリエッティは翔との出会いによって人間への恐怖だけではない可能性を知りました。
小人と人間という圧倒的な違いがあるからこそ、2人の交流には特別な意味があります。
また、制作秘話を知ることで、この作品が単なる「小人の物語」ではなく、「失われつつあるものを見る物語」でもあることが分かります。
普段なら気づかない小さな変化、古い家に残る記憶、身近な自然。
米林監督が描いたかったのは、そうした小さな世界の美しさだったのではないでしょうか。
まとめ|借りぐらしのアリエッティの裏話を知ると作品がもっと深く楽しめる
『借りぐらしのアリエッティ』には、制作秘話やキャラクター設定、舞台モデルなど多くの裏話があります。
宮崎駿さんや鈴木敏夫プロデューサーが長年温めていた企画を、米林宏昌監督が新しい感性で映像化した作品でした。
原作のイギリスから現代日本へ舞台を変更した理由や、翔のキャラクター作り、盛美園を参考にした美しい背景など、知れば知るほど発見があります。
一方で、ネット上に広がる都市伝説の多くは公式設定ではありません。
大切なのは、噂に惑わされることではなく、作品に込められたテーマや制作陣の想いを味わうことです。
小さな世界に大きな感動を詰め込んだ『借りぐらしのアリエッティ』は、裏話を知ることでさらに奥深く楽しめるジブリ作品と言えるでしょう。
よくある質問
借りぐらしのアリエッティの監督は誰ですか?
『借りぐらしのアリエッティ』の監督は米林宏昌さんです。2010年公開時、スタジオジブリ史上最年少の長編監督として注目されました。
アリエッティのモデルになった場所はどこですか?
青森県平川市の盛美園や、東京都小金井市の「はけの小路」周辺などが舞台イメージの参考になったと言われています。
アリエッティ一家のその後は描かれていますか?
映画では新しい住処へ旅立つ場面までが描かれており、その後の生活について明確な続編描写はありません。観客の想像に委ねられています。





